営業職をしていると、「自分が営業を受けるのが怖くなる」という不思議な現象に気づくことがあります。
これは営業をやったことのある人にしかわからない、ある種の「職業病」のような感覚かもしれません。
私自身、これまで法人営業として数百社を訪問してきました。
提案資料を作り、ヒアリングし、クロージングまで持っていく。
そんな仕事を繰り返す中で、あるとき気づきました。
「自分が営業される側になると、やたらと緊張するな」ということ。
今回は、営業マンとして働いてきた私が感じた「営業を受けることの怖さ」について、深堀りしていきます。
営業職の方なら共感いただける内容かと思いますので、ぜひ最後までお読みください。
相手の気持ちが手に取るように分かってしまうから
営業を長くやっていると、相手の表情、言葉のトーン、目線、間の取り方などから、「今、売り込みをしようとしているな」という空気が手に取るように分かるようになります。
「この質問は、こっちのニーズを引き出すためだな」「次に出す資料で一気に決めにくるな」「この沈黙は、こっちの返事を引き出すためのテクニックだな」
といったように、相手の営業戦術が見えてしまうのです。
私も営業職ですから、相手のやり方を観察して学ぶこともできます。
しかし、相手の営業戦術が見えてしまうことがプレッシャーになります。
「ああ、今この人、売ろうとしてるな」「本当はこっちの反応を見て焦ってるな」と感じるたびに、自分の中でブレーキがかかってしまうのです。
「営業される」こと自体に、警戒心を持つようになってしまう。
これは営業職ならではの「職業的な副作用」とも言えるかもしれません。
納得感があると契約してしまいそうになるから
営業を受けるとき、「この人、うまいな」と思ってしまう場面があります。
提案に納得感があり、話の流れも自然で、商材にも魅力がある。
「確かに必要かもな」と思えてしまうのです。
でも、だからこそ怖いのです。
「このまま話を進めたら、契約してしまうかもしれない」「自分なら、この流れで決めにいくな…」「これ、断るの難しいな」
そう思ってしまった瞬間、頭の中で「逃げ道」を探し始めます。
断る理由、他の選択肢、決断を先延ばしにする言い訳など。
営業職をしていると「この話は刺さるな」「このロジックは強いな」という感覚が、自分の中に育ってしまっています。
だからこそ、上手な営業を受けたときに、本当に契約したくなってしまうのです。
断るのが上手くなった分、心苦しさも増えたから
営業経験を積むと「断るスキル」も自然と身につきます。
「すみません、今は予算がなくて…」「他社さんで似た提案があって…」といった言葉を使いながら、角を立てずに交わす方法が身につきます。
でも、それをやるたびに、どこかで心が痛むのです。
なぜなら、自分も同じ立場を経験してきたから。
頑張って資料を作り、何度もメールや電話でフォローし、ようやくたどり着いた商談の場。
そこですっとかわされる。
相手の言葉が表面的だと分かっていても「仕方ないですよね」と自分を納得させるしかない。
そういった体験を何度もしてきたからこそ、断るときの「相手の気持ち」が想像できてしまうのです。
「この人、内心ではがっかりしてるだろうな」「でもこれ以上付き合えないから、断るしかない」
この葛藤が、営業を受けることをますますストレスフルなものにしていきます。
営業職は人の気持ちを読み取るのが得意な分、断る側に回るときに苦しみが増すという、皮肉な構造があるのかもしれません。
【まとめ】営業職の人は営業マンに気をつけよう!
営業職をしていると、相手の意図やセールストークの流れが見えるようになります。
その分、営業を受ける際に警戒心が強くなったり、契約したくなる自分に戸惑ったりするものです。
断る時も相手の気持ちが分かるからこそ、余計に心が重くなることもあるでしょう。
だからこそ、営業マンとしてのスキルを持つ人ほど、営業を受ける際には「一生活者としての視点」を忘れないことが大切です。
冷静に判断し、自分の軸で選びましょう。
ちなみに、営業職なら一度は読んでおきたいのが『営業の魔法』という一冊です。
ストーリー仕立てで読みやすく、営業の本質を改めて思い出させてくれます。
自分の提案に自信が持てないとき、営業という仕事の意味を見失いそうなとき、きっと軸を取り戻すヒントになるはずです。